旧茨城県庁の現在は?三の丸庁舎の魅力とロケ地選出の理由を徹底解剖
水戸城三の丸跡の緑豊かな敷地に、堂々たる威容を誇るレトロな近代建築。1930年(昭和5年)の竣工以来、長きにわたり県政の心臓部として歴史を刻んできたのが旧茨城県庁舎です。1999年(平成11年)に県庁機能が水戸市笠原町の新庁舎へと移転したあとも、「茨城県三の丸庁舎」と名を変え、その気品ある佇まいは市民や観光客に深く愛され続けています。
近年では昭和初期の面影を色濃く残す建築美が高く評価され、映画やテレビドラマの撮影ロケ地として全国的な注目を集める一方、一般公開エリアの散策スポットとしても人気を博しています。本稿では、激動の歴史と移転の経緯、建築的魅力、ロケ地としての実績、さらに現地を訪れる際に押さえておきたい見学ルールや駐車場情報まで、現地取材と公式データを交えて余すところなくお伝えします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:旧茨城県庁(現・茨城県三の丸庁舎)は昭和5年完成の近代洋風建築であり、国の登録有形文化財として現在も公的機関や展示施設が入居する現役施設である。
- 要点2:名匠・置塩章が設計した近世ゴシック様式とスクラッチタイルの外壁美が評価され、数々の有名映画・ドラマ撮影の舞台として重宝されている。
- 要点3:エントランスや外観は無料で見学可能。水戸駅北口から徒歩約10分とアクセスも良好で、敷地内駐車場(優遇措置あり)も完備されている。
【現在と歴史】旧茨城県庁の歩みと三の丸庁舎への転換・移転経緯
水戸市三の丸の地に佇む旧茨城県庁は、昭和恐慌の足音が忍び寄る1930年(昭和5年)3月に完成しました。それまで使用されていた木造2階建ての前庁舎が手狭となり、耐火・耐震性に優れた恒久的な本館として建設されたものです。以来、戦前・戦後の激動期、さらには高度経済成長期から平成初期に至るまで、約70年間にわたり県政の中枢を担い続けました。
転機が訪れたのは1990年代後半です。行政需要の高度化や庁舎の老朽化、執務スペースの狭隘化に伴い、茨城県は県庁機能の大規模な移転計画を推進。1999年(平成11年)2月、水戸市笠原町に地上25階建ての最新鋭タワー型新県庁舎が開庁し、旧本館はその役目を終えることとなりました。
移転に伴い一時は解体や大規模改修の議論も持ち上がりましたが、県民からの強い保存要望と歴史的価値の再評価を受け、外観と主要構造を保全する形で改修が施されました。名称を「茨城県三の丸庁舎」と改め、現在では茨城県公文書館や各種行政関連団体、県民交流スペースが入居する複合拠点として再活用されています。1999年には、昭和初期の大規模官公庁建築の貴重な遺構として、国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。

【建築美の真髄】名建築家・置塩章が手掛けた近世ゴシック様式の見どころ
三の丸庁舎の建築的な価値を語る上で欠かせないのが、当時の茨城県営繕課長であり、宮内省内匠寮や兵庫県営繕課でも腕を振るった名建築家・置塩章(おきしお あきら)による設計です。置塩は兵庫県公館(旧兵庫県本庁舎)や宮崎県庁舎を手掛けたことでも知られ、重厚かつ端正な公共建築のパイオニアとして高い評価を得ています。
本建築の最大の特徴は、当時流行していた近世ゴシック様式(ネオ・ゴシック様式)を基調としている点です。鉄筋コンクリート造地上3階(一部4階・塔屋付)の威風堂々たるフォルムは、シンメトリー(左右対称)を基本としながらも、随所に繊細な意匠が施されています。
| 鑑賞ポイント | 特徴・ディテール | 建築史における位置づけ | 編集部の見解・見どころ |
|---|---|---|---|
| 外壁スクラッチタイル | 手仕事による溝が刻まれた淡褐色の特注タイル | フランク・ロイド・ライトの帝国ホテル以降流行 | 夕陽を受けると独特の陰影と温かみが際立つ |
| 中央車寄せ・玄関ポーチ | 連続する半円アーチと太い角柱による重厚な構え | 昭和初期官公庁建築の威厳を象徴 | 官公庁や大企業本社を模した撮影に最適の画角 |
| 中央階段ホール | 大理石の手すり、テラゾー仕上げの床、幾何学装飾 | アール・デコ調を取り入れた近代インテリア | 自然光が差し込む吹き抜けは圧巻のクラシック美 |
| 連続アーチ窓と塔屋 | 最上階を飾るアーチ窓と中央に突き出た時計台状の塔 | 垂直性を強調するゴシック・リバイバルの系譜 | 前庭の緑地越しに見上げるアングルが随一の美しさ |
外壁を覆うスクラッチタイルは、櫛目状の溝が刻まれた昭和初期特有の素材であり、光の角度によって多彩な表情を見せます。また、玄関から内部へと足を踏み入れると、磨き抜かれた石造りの大階段が来訪者を迎えます。華美な装飾を削ぎ落としつつも品格を保つこの空間構成は、置塩章の卓越した職人技と合理主義的な設計思想を雄弁に物語っています。
【ロケ地聖地巡礼】映画や名作ドラマ撮影に三の丸庁舎が選ばれる理由
旧茨城県庁(三の丸庁舎)の存在感を全国区へと押し上げた大きな要因が、数多の映画・テレビドラマ・ミュージックビデオのロケ地としての起用です。映像業界関係者の間では「東日本屈指のロケーション資産」として知られており、年間を通じて多彩な撮影誘致が行われています。
ロケ地として選ばれ続ける背景には、大きく3つの決定的なアドバンテージが存在します。
第一に、「本物の昭和初期建築が持つ圧倒的な説得力」です。CGやセットでは再現が極めて困難な、年月を重ねた大理石の質感やタイルの風合い、高い天井高が、昭和の官公庁、警視庁本部、司法機関、戦前の大学病院、大財閥の本社ビルといった設定に完璧なリアリティを与えます。
第二に、「東京都心からのアクセスの良さと受け入れ体制」です。都内から特急で約1時間強という立地に加え、いばらきフィルムコミッションおよび茨城県の手厚いロケーション支援体制が整備されているため、大規模な機材搬入やエキストラを動員したロケが極めてスムーズに進行します。
過去には、社会的ブームを巻き起こした映画『シン・ゴジラ』をはじめ、大ヒットドラマ『下町ロケット』、NHK連続テレビ小説『花子とアン』、映画『図書館戦争』シリーズ、さらには『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』など、名だたる大作の重要シーンがこの庁舎内外で撮影されました。重厚な正門アプローチやクラシカルな階段室は、画面越しにも一目でそれと分かる強い存在感を放っています。

【実態検証】見学手順とアクセス・駐車場利用の実用ガイド
映画のロケ地巡りや近代建築散策として訪れる際、事前に確認しておくべき基本情報を整理しました。現役の公的機関として稼働しているため、一般的な観光施設とは異なるルールが存在します。
| 項目 | 詳細情報・利用実態 | 一般的な施設基準 | 訪問時の注意点 |
|---|---|---|---|
| 所在地・交通 | 茨城県水戸市三の丸1-5-38(JR水戸駅北口から徒歩約10分) | 地方中核都市の駅前エリア | 笠原町の新県庁(駅からバス20分)との誤認に注意 |
| 見学可能時間 | 平日 8:30〜17:15(外観および共用玄関ホール等) | 公共施設の標準開館時間 | 土日祝は公文書館等を除き建物内部は閉館の場合あり(前庭は開放) |
| 入場料・見学料 | 無料(事前予約不要) | 300円〜500円程度が相場 | 執務室など立入禁止区域には入らないこと |
| 駐車場設備 | 敷地内駐車場あり(有料ゲート式、約100台規模) | 駅近隣のコインパーキング相場(30分200円) | 施設利用・見学用件により窓口で減免認証が可能な場合あり |
訪問のベストタイミングは、陽光が建物の正面を柔らかく照らす午前中から午後前半です。正面の前庭には芝生と豊かな木々が広がり、弘道館や水戸城大手門といった周辺の歴史的名所とあわせたウォーキングコースとしても極めて優秀な環境が整っています。
一般に知られていない盲点とネットの誤解
旧茨城県庁(三の丸庁舎)について情報収集する際、インターネット上の口コミや簡易まとめ記事などで散見される「いくつかの誤解」に注意する必要があります。現地取材と事実関係に基づき、代表的な誤認を検証します。
誤解1:「旧庁舎は完全に観光向けテーマパーク化している」という誤認
一部の旅行ブログなどで「レトロ観光館として全館自由に見学できる」といった記述が見受けられますが、これは正確ではありません。三の丸庁舎は現在も茨城県の現役公的機関や公文書館、関連団体が執務を行う行政オフィスです。一般来訪者が自由に見学・撮影できるのは、外観、前庭、中央玄関エントランスホール、公文書館の展示エリアなどの共用部に限られます。執務室フロアへの無断立ち入りや、職員・来庁者のプライバシーを侵害する撮影は厳禁です。
誤解2:「茨城県庁」でナビを設定すると三の丸庁舎に着くという勘違い
県外からのドライブ来訪者によくあるトラブルが、カーナビゲーションや地図アプリに単に「茨城県庁」と入力してしまうケースです。現在「茨城県庁」と入力すると、南に約5km離れた水戸市笠原町の超高層新庁舎へ案内されます。歴史的建造物である旧庁舎を目指す際は、必ず「茨城県三の丸庁舎」または「茨城県公文書館」で目的地検索を行うよう留意してください。

【プロの結論】近代建築ツーリズムの視点から見た価値と訪問判断基準
旧茨城県庁(三の丸庁舎)は、地方都市における近代化遺産(ヘリテージ)の動態保存(アダプティブ・リユース)として、日本国内でも傑出した成功モデルと言えます。単に箱モノを残すのではなく、公文書館や執務機能といった実用性を維持しながら、フィルムツーリズムの旗手としても機能させている点は、都市社会学的にも極めて示唆に富む好例です。
訪れるべき人・おすすめできる条件
- 近代建築・レトロ意匠愛好家:置塩章が手掛けた昭和初期の重厚なスクラッチタイルや近世ゴシックの様式美を間近で鑑賞したい方。
- 映画・ドラマのファン(聖地巡礼者):『シン・ゴジラ』『下町ロケット』など、数々の名作劇中に登場した重厚なアプローチや階段を肌で体感したい方。
- 水戸の歴史散策を楽しむ観光客:水戸駅北口から弘道館、水戸城大手門、三の丸庁舎と連なる歴史回廊を徒歩でコンパクトに巡りたい方。
訪問を慎重に検討すべきケース
- アミューズメント施設のような体験型観光を求める方:内部は静謐な行政施設であり、派手なアトラクションや常設カフェテリアの充実を第一目的にすると物足りなさを感じる可能性があります。
- 土日祝に「建物内部の全景」をくまなく見学したい方:休日は館内の一部共用部が閉鎖される場合があるため、館内細部の見学を重視する場合は平日の開館時間帯を狙う必要があります。
【旧茨城県庁】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:旧茨城県庁(三の丸庁舎)の見学には予約や入場料が必要ですか?
A1:外観や前庭、1階エントランスホール、公文書館展示室などの公開エリアは、予約不要・入場無料で見学可能です。ただし、団体での見学や公文書館の特定資料閲覧を希望する場合は、事前の問い合わせをおすすめします。
Q2:車で訪れる場合、駐車場は利用できますか?
A2:敷地内に有料の来庁者・見学者用駐車場が整備されています。公文書館の利用や各種手続きなど、施設の利用目的に応じて窓口で駐車券の減免処理が受けられる場合があります。満車時は周辺のコインパーキングをご利用ください。
Q3:館内での写真撮影やSNSへの投稿は可能ですか?
A3:個人の記念撮影程度であれば共用ホール等で撮影可能です。ただし、三脚や大型照明を持ち込んでの本格撮影、商業目的の撮影、他の来庁者や職員の顔が映り込む形での撮影・無断投稿は禁止されています。規程に従って節度ある撮影を行ってください。
Q4:水戸駅からどのように行けば一番近いですか?
A4:JR常磐線「水戸駅」の北口を出て、ペデストリアンデッキを北西方向へ進み、水戸東照宮や弘道館方面へ向かって徒歩約10分です。平坦な道が多く、周辺の城下町風情を楽しみながら徒歩で無理なくアクセスできます。
まとめ:歴史の息吹を今に伝える水戸の至宝を体感するために
1930年の竣工からまもなく100年の節目を迎えようとしている旧茨城県庁(現・三の丸庁舎)。激動の昭和、平成の機能移転を乗り越え、いまなお現役の施設として凛とした姿を保ち続けるその姿は、水戸の都市文化の深さを象徴しています。
名匠・置塩章が遺したネオ・ゴシックの端正な美しさに触れるもよし、スクリーンを彩ったロケ地の情景に思いを馳せるもよし。水戸を訪れる際は、近隣の弘道館や水戸城跡とあわせて、昭和モダニズムの薫る三の丸庁舎へぜひ足を運んでみてください。時を超えて受け継がれる本物の建築美が、静かにあなたを迎えてくれるはずです。 (出典: 旧 茨城 県庁(Yahoo!ニュース))